日本のきものの模様
大舎人(おおとのえ)の孫三郎が
織り手をこめたる織衣(おりごろも)
牡丹・唐草・獅子や象の
雪降り竹の籬(まがき)の桔梗と
移れば変わる白菊の
大舎人の竹の下
裏吹く風もなつかし
鎖(さ)すようで鎖さぬ折木戸(おりきど)
など待つ人の来ざるらん

大舎人の孫三郎が丹精をこめて織り上げた衣の模様は、牡丹、唐草、獅子や象、雪降り竹の籬の桔梗、移ろう白菊と、とりどりに移ろい変わるよ。あの人の心のように。大舎人の竹の裏葉を吹く風に、訪れかと思ってはっとしたのが懐かしい。その折木戸を、閉ざすに閉ざせず待っているのに。何故あの人は来ないのか。

(『閑吟集』No254)


毘沙門亀甲-Bisyamonkikkou-
幾何文様の一種。亀甲を山形に三つ組み合わせたもの。毘沙門天の甲冑の文様にちなむ名。白生地の地紋、帯の柄などによく使う。


亀甲花文-Kikkoukamon-
正六角形の幾何文様を亀甲という。亀甲文はめでたい柄として平安時代から有職文様とされている。亀甲文を上下左右に繋いだ「亀甲繋ぎ」の中に、梅やかたばみなどの花文を入れたものを「亀甲花文」という。平安時代以来、衣装や調度の文様に多く見られ、桃山時代の能装束にも残されている。図のように「花菱」を入れたものは「亀甲花菱文」といい、これもこれで一つの有職文様として好まれる。
花菱文も有職文様の一つ。菱形の中に花びらを四枚入れたもの。花菱は染下の白生地の地紋、帯の地紋に用いられる。


紗綾形-Sayagata-
卍の字を崩して組み合わせ、連続模様としたもので、「雷文繋ぎ」とも言う。桃山時代に明から伝わってきた織物「紗綾」の地紋に使われていたため紗綾形という名がついたという。江戸時代にはこの上に菊や蘭をあしらった小袖が流行した。
紗綾形を背景にして、梅、蘭、竹、菊(これを四君子模様Shikunshimoyouと言う)をあしらったものを特に「本紋Honmon」と言い、現在も白生地の地紋として多く見られる。「本紋」の名の由来は、紋綸子に「本」をつけた「本紋綸子」を略したものとも、また徳川家の定め柄を本紋と呼んだからとも言われている。


朽木形文-Kutikiagtamon-
朽ちた木や板の形を文様化したもので、縦に流れるものも横に流れるものもある。横の朽木形文と雲の見分け方は、途切れているかどうかでわかる。朽木形文は模様が途切れず続いている。平安時代から几帳の模様などに使われた。現在は白生地の地紋や、小紋などの模様に用いられる。


武田菱(四つ割菱、割菱)-Takedabishi-
菱文の一種。菱形4つをさらに菱形に組み合わせたもの。甲斐の武田氏の家紋だったことからこのように呼ばれる。(ここでは黒地に茶色の武田菱)
有職文様(平安以来公家の服装、調度、輿車などの装飾に用いられた古典的な文様)の一つ。


業平菱(業平格子)-Narihirabishi-
絵画にある在原業平(ありわらのなりひら)の衣服の文様。もとは三重襷(たすき。たすきは斜め線の格子。)と一重襷を組み合わせ、一重襷の交点に花弁状のものを配した。『源氏物語絵巻』の衣服にも描かれている古い文様。


市村格子-Ichimuragoushi-
歌舞伎好み文様の一つ。歌舞伎好み文様とは、江戸時代の歌舞伎役者が扮装に用いた衣服の文様が当時庶民の間で流行し、それが現代にまで残ったもの。七代目市村団十郎の「かまわぬ(鎌輪奴)」、三代目尾上菊五郎の「菊五郎格子」、四代目松本幸四郎の「高麗屋格子」などが有名。
市村格子は十二代市村羽左衛門好みの柄。横の一本縞、縦の六本縞、「ら」の字で「いちむら」と読ませるしゃれになっている。
ゆかたの柄などに使われている。


霞文-Kasumimon-
霞をイメージで文様化したもの。きものの模様ではぼかしや模様の区切り(霞取り)などとしてよく使われる。片仮名の「エ」の字になったものを「エ霞」と言う。形の無い霞をみごとに形象化した美しい文様である。


立涌-Tatewaku-
有職文様の一つ。波状型が向き合っている。ふくらみの中に菊、桐、雲などを入れた「菊立涌」「桐立涌」「雲立涌」などがある。現代でも染織物によく使われる古典模様。左の絵は「桐立涌」。


遠州椿-EnysuuTsubaki-
江戸時代の茶人で、遠州流の茶華道の祖として知られ、造園家でもあった小堀遠州が好んだ文様と言われる。椿の花を図案化した茶人好みの文様で、着物、羽織、帯、浴衣などに用いられる。


麻の葉文-Asanohamon-
6角形を基本にした模様。この場合たくさん繋いでいるので「麻の葉繋ぎ」という。形が大麻の葉に似ているらしい。私は大麻を見たことがないので良く分からないが・・。着物、浴衣、長襦袢や小物にも使われる。麻が丈夫で成長の早いことから、子供の産着としても好んで用いられた。


観世水-Kanzemizu-
能楽の流派、観世流の観世太夫が定式文様として使ったことから観世水と呼ばれるようになった、水文様の一つ。格調ある古典文様として、謡本の表紙や、能の装束をはじめ、染織に広く用いられる。白生地の地紋、帯地としても使われる。


七宝文-Sippoumon-
有職文様の一つ。同じ大きさの円を、円周の4分の1ずつ重ねていく方法から、輪繋ぎともいう。円の中心に四弁花を入れたり、重なりの部分に文様を入れたりしたものもある。七宝とは仏教の言葉で、金、銀、瑠璃、瑪瑙(めのう)、真珠、白珊瑚、水晶のこと。着物、帯などに用いられる。


参考:婦人画報社編『きものの文様図鑑』婦人画報社1988年





つづく

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